庵主あいさつ

伊豆にある古民家「知半庵」は江戸時代の文化5年に建てられた庄屋の家で、昨年2008年(平成20年)で築二百年を迎え、現代アートの実験場として、公に開くことになりました。
これが「知半アートプロジェクト」です。

© IWASA Eiichiro, Chihan Art Project


「知半庵」は、伊豆文化の香りを受け継ぎながら、今、現代アーティストの実験場として、新たな文化の文脈を生み出そうとしています。
江戸時代と現代、伊豆と東京、日本と海外、文化を交差させる場として、スリリングな企画で、「知半庵」を公に開き、育てていきます。
菅沼家の孫娘としてここに生まれた私は、伊豆だけでなく国内の各地、また海外に住み滞在し、異文化に接してきました。私にとって大切な記憶装置である「知半庵」を閉じるのではなく開き、今、様々な国のアーティストが、新たな「日本の場」として再発見し、活用してくれることを願い、「知半アートプロジェクト」を進めていきたいと思います。
あわやのぶこ

寒中お見舞い申し上げます

寒中お見舞い申し上げます。

知半庵はただいま冬休み。門の修復など色々な整備を行っています。
ホームページも冬眠気味ですが、春には始動します。

初めてこのサイトを開いた方は、是非、右の色々なカテゴリをクリックし、知半アートプロジェクトを知っていただければ幸いです。

また春にお会いしましょう。

あわやのぶこ

知半庵からプラハへ、知半庵からフィラデルフィアへ

今年は特別に暑さの厳しい日本ですが、皆さまおいかがお過ごしですか。知半アートプロジェクトより、残暑お見舞い申し上げます。

さて、この暑さを払いのけてくれるような心躍るニュースを2つお知らせいたします。


1 知半庵よりプラハ

去年の第3回知半アートプロジェクト「江戸の尺八、時空を翔る」の尺八奏者、志村禅保さんとクリストファー遥盟さんが、来る8月26日から30日まで、チェコプラハ市で行われる「ヨーロッパ尺八フェスティバル2010」で吹奏します。
志村氏は地無し尺八を、クリストファー氏は吹奏のみならず、このフェスティバルの企画者、芸術アドバイザーとしても大活躍されています。
地無しの世界、三曲から現代曲までを網羅するこの「ESF」に興味のある方は是非、以下のホームページをご覧下さい。
http://www.komuso.cz/en/festival
クリストファー氏が以前、知半庵で「尺八はもう日本だけの文化じゃない、世界のものですよ」と実感を込めて言われたのですが、それの表れとして、日本出身者以外の音楽家が尺八の曲を多数、作曲しているという事実やこのような国際尺八の場があることを是非、皆様に知っていただきたいと思います。
今回、庵主もプラハに参ります。2009年夏の緑に覆われた裏庭でのお二人の写真(撮影:岩佐英一郎)で制作した知半アートのポスターも会場に飾られます。


2 知半庵よりフィラデルフィア
2008年アメリカよりリア・スタイン、ロコ・カワイ、トシ・マキハラ、日本からは新井英夫、きむらみかの5名が出演した日米共同のコンテポラリーダンス公演が行われました。これはアーティストたちが知半庵で逗留制作し公演するという「場」を限定した珍しいサイト・スペシフィック作品「伊豆の家(英名:イズ・ハウス)」でした。
このたび、リア・スタイン・ダンスカンパニーの拠点フィラデルフィア市で行われる「フリンジ・フェスティバル」(9月9日〜11日)で同じメンバーがアメリカ版を制作し4回公演します。題して「ジャパン・ハウス(邦名:日本の家)」。フィラデルフィアにある日本家屋「SHOFUSO」を場とする作品で、日本側のアーティストは国際交流基金などの支援を得て渡米します。
詳しくはLeah Stein Dance Company をクリックしてご覧ください。
踊り手の一人、新井英夫氏は「知半庵からスタートしたご縁が太平洋を渡ります。これも知半さんから面々と続くアート的こころざしのバトンリレー」と語っています。
知半庵からもスタッフ司馬がフィラデルフィアに向かいます。どんな作品になるのか楽しみです。
2008年の公演をご覧になっていない方は、この知半アートや上記のリア・スタイン・ダンス・カンパニーのサイト、そしてu-tubeでの「知半アートプロジェクト」→検索でご覧いただけます。


皆様、どうぞ暑さにめげず、伊豆から外へと広がる「知半アート」の世界をお楽しみください。


あわやのぶこ

「おくやみ」ヘルベルト・プルチョウ(Herbert Plutchow)氏(日本文化研究家、カルフォルニア大学名誉教授)

知半アートプロジェクトの協力者であり、第4回目のアーティストトークに出演されたヘルベルト・プルチョウ(Herbert Plutchow)氏(日本文化研究家、カルフォルニア大学名誉教授)が、今年6月24日にくも膜下出血のため急逝されました。
プルチョウ氏は1939年スイス生まれ。イギリス、スペイン、フランス、アメリカで学び、パリ大学ではロシア語、中国語、日本語を習得し、文部省の国費留学生として来日。早稲田大学大学院(日本文学とロシア文学の比較研究)を修了。コロンビア大学ではドナルド・キーン教授の下で博士号(日本中世文学)を取得し、長年、カリフォルニア大学教授として日本学を教えました。
7ヶ国語に精通され、グローバルに日本文化を見るプルチョウ氏は、従来の日本文化研究の枠を超えた国際日本学の視座で研究を進めておられました。「江戸の旅日記:徳川啓蒙期の博物学者たち」(集英社新書)、「ニッポン通の眼:異文化交流の四世紀」(淡交社)など日英での著書は多数、この4月に出版したばかりの「茶道と天下統一:ニッポンの政治文化と茶の湯」(篠田綾子訳、日本経済新聞出版社)を携え、知半庵に来られました。
5月1日のアーティストトークでは、立ち見が出るほどぎっしり集まった観客をユーモアで笑わせながら、「陰影礼賛」から、日本文化がどう西欧で受け取られているのか、日本美術とその影響など、楽しみながら話をされ、パネリストとの呼応、観客との会話も大いに楽しまれていました。
多忙な氏は、この時、愛妻の順子(よしこ)さんと、久々に伊豆でゆっくりした時を楽しまれたようです。トーク後に、観客の中から湧き上がったビオラ(田中景子)、尺八(クリストファー遙盟)、ボイス(きむらみか)の即興演奏を共に炉辺で楽しまれたその姿が深く印象に残っています。
江戸時代の文化サロンの研究家でもあるプルチョウ氏は、07年に知半庵でのアートの試みが始まった時から理解と賛同を示され、大きな力を下さいました。
プルチョウ氏との楽しいひと時がここにあったことを、私たちは幸せに思うとともに、氏に心より感謝し、ご冥福をお祈り申し上げます。
プルチョウ先生、本当にありがとうございました。

                       知半庵 あわやのぶこ

注)プルチョウ氏のお写真は、ご家族の許可を得て掲載させていただきました。

クロワッサンに記事掲載

6月25日発売の雑誌「クロワッサン」(785:2010年7月10日号)に知半アートプロジェクトの記事が掲載されています。
目次の横の人欄「あなたに伝えたい」です。知半庵の写真も掲載され、庵主がインタビューされています。どうぞご高覧ください。

第4回知半アートプロジェクト:感謝の意

第4回知半アートプロジェクト「記憶素子」は、無事終了いたしました。
今回は、知半庵にとって初の美術展でした。静岡、神奈川、奈良、京都、大阪、東京や千葉、茨城など関東一円、また外国からも多くの方々にお越しいただき、作品と場を存分に味わっていただくことができました。本当にありがとうございました。
アーティストトークも庭からの立見も出るほどの満員御礼でした。ご参加の「みなさんこそが、現代の江戸文化サロン」とヘルベルト・プルチョウ氏が言われたように、熱とユーモアに包まれた素晴らしい会となりました。
知半アートに御来場くださった皆さま一人一人に、心より感謝申し上げます。多くのご感想やコメント、励ましを糧に、知半庵はより興味深いアートプロジェクトを構想中です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2010年6月吉日               知半アートプロジェクト委員会一同

第4回知半アートプロジェクト

第4回 知半アートプロジェクト 大野公士×知半庵(伊豆大仁)
大野公士の木彫作品展 「記憶素子(きおくそし) storage element」

© OHNO Kouji “Storage Element” (2010) site-specific installation at Chihan Art Project      photo courtesy of the artist

気鋭の彫刻家、大野公士が、伊豆に江戸時代に建てられた「知半庵」(築202年)を使い、現在の日本人と過去の記憶を問う作品を展開します。裏庭に建てられた二畳茶室のような瞑想の部屋。屋内の広間には男、奥座敷には女。樟(くす)の木のボディが宙に浮かびます。伊豆の庄屋の家「知半庵」の過去と現在。江戸時代から明治へ、西洋の産業革命を受け入れ変容をとげた日本。その現在を生きる彫刻家、大野公士。「場」と「時」と「ヒト」が織りなすアート世界です。気の向くまま、五感で、家や庭を巡ってください。
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開催期間:4月29日(木)−5月9日(日)11am-5pm (最終日は4pm閉館)
入場料:予約1000円(当日1300円)、学割800円(予約当日とも)*入場料は、室内観覧+庭散策+お茶&お菓子セット+ご希望の方には裏庭でのタケノコ掘り(ご自由にお持ち帰り下さい)のすべてを含みます。*期間中、知半庵ではアートカフェ「茶の間」を開きます。
アーティスト・トーク 5月1日(土)1:30pm-3pm 於:茶の間
出演:大野公士+ヘルベルト・プルチョウ+藤嶋俊会+あわやのぶこ
場所:伊豆の国市、旧下田街道ぞい「原酒店」前、旧菅沼家住宅「知半庵」
交通:東海道線・新幹線の三島駅より伊豆箱根鉄道駿豆線」で25分、修善寺駅の2駅手前「大仁」駅下車、徒歩7分。(東京から修善寺行き「踊り子号」乗換無しで大仁着)*ご予約の方に「知半庵」の詳しい地図やご案内をお送りします。
主催:知半アートプロジェクト委員会 
後援:伊豆の国市 協力:ギャラリー四門
http://d.hatena.ne.jp/chihan_project_jpn/ (Japanese) http://chihanartproject.blogspot.com/ (English)

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アーティストプロフィール:大野公士
1971年、東京・日本橋生まれ。物心ついてから、絵を描く時間なしにはいられず、芸術家を志す。1994年、多摩美術大学彫刻科卒。1996年、同大学院修了。その後、デザイン会社勤務、人里離れた小屋での作品制作など多くの試行錯誤を経て、東京や韓国で作品の発表を始める。2000年、横浜の古いアパートを自ら改造したギャラリー「棲山荘」を開く。2002年に順天堂大学の解剖学教室の扉を叩き、解剖学を学び始める。2006年、横浜の石川町に新たな拠点を定め、企画画廊「ギャラリー四門」を始動。2008年よりオランダ、デルフト市のWAD(ワールド・アート・デルフト)に制作出展。現地の廃材で茶室のような作品を作るなど日本の空間と時間を意識的に扱う。
鉄などのメタル材質を使った制作もするが、一貫して『ヒト』という存在の意味に拘泥し、木のボディを彫り続けている。

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個展:2008年 ギャラリーQ 「Dichotomic Structures」(東京、銀座)/2007年 ギャラリー四門 大野公士舞台彫刻「奏刻舞躰」展(横浜、石川町)/2006年 ギャラリー四門「The Awakening」(横浜、石川町)、ギャラリーéf 「The Revelation」(東京、浅草)/2009年 Homage to the Delft city(オランダ、デルフト)グループ展/2008年 Recycle Art - World Art Delft(オランダ、デルフト)グループ展/2009年 Tentoonstelling DELFT(オランダ、デルフト)/2nd World Art Delft Poetry II - World Art Delft(オランダ、デルフト)
講演:2004年 順天堂大学三木成生記念シンポジウム「解剖を必要とした芸術家」(東京、順天堂大学
舞台彫刻制作:2008年 大野一雄フェスティバル「奏刻舞躰」(横浜、BankartNYK)/2007年 クリストファー遙盟公演「興に即す」舞台彫刻制作(東京、津田ホール)/2006年 ギャラリー四門オープン記念公演「奏刻舞躰」(横浜、山手ゲーテ座)、大野公士個展「Revelation」記念公演「奏刻舞躰」(東京、ギャラリーéf)
主宰:2006年〜ギャラリー四門(横浜、石川町)/2000〜2003年 ギャラリー棲山荘(横浜中華街、築50年のアパートを改造したギャラリー)

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知半アートプロジェクト連絡先 携帯090-8306-9766