「おくやみ」ヘルベルト・プルチョウ(Herbert Plutchow)氏(日本文化研究家、カルフォルニア大学名誉教授)

知半アートプロジェクトの協力者であり、第4回目のアーティストトークに出演されたヘルベルト・プルチョウ(Herbert Plutchow)氏(日本文化研究家、カルフォルニア大学名誉教授)が、今年6月24日にくも膜下出血のため急逝されました。
プルチョウ氏は1939年スイス生まれ。イギリス、スペイン、フランス、アメリカで学び、パリ大学ではロシア語、中国語、日本語を習得し、文部省の国費留学生として来日。早稲田大学大学院(日本文学とロシア文学の比較研究)を修了。コロンビア大学ではドナルド・キーン教授の下で博士号(日本中世文学)を取得し、長年、カリフォルニア大学教授として日本学を教えました。
7ヶ国語に精通され、グローバルに日本文化を見るプルチョウ氏は、従来の日本文化研究の枠を超えた国際日本学の視座で研究を進めておられました。「江戸の旅日記:徳川啓蒙期の博物学者たち」(集英社新書)、「ニッポン通の眼:異文化交流の四世紀」(淡交社)など日英での著書は多数、この4月に出版したばかりの「茶道と天下統一:ニッポンの政治文化と茶の湯」(篠田綾子訳、日本経済新聞出版社)を携え、知半庵に来られました。
5月1日のアーティストトークでは、立ち見が出るほどぎっしり集まった観客をユーモアで笑わせながら、「陰影礼賛」から、日本文化がどう西欧で受け取られているのか、日本美術とその影響など、楽しみながら話をされ、パネリストとの呼応、観客との会話も大いに楽しまれていました。
多忙な氏は、この時、愛妻の順子(よしこ)さんと、久々に伊豆でゆっくりした時を楽しまれたようです。トーク後に、観客の中から湧き上がったビオラ(田中景子)、尺八(クリストファー遙盟)、ボイス(きむらみか)の即興演奏を共に炉辺で楽しまれたその姿が深く印象に残っています。
江戸時代の文化サロンの研究家でもあるプルチョウ氏は、07年に知半庵でのアートの試みが始まった時から理解と賛同を示され、大きな力を下さいました。
プルチョウ氏との楽しいひと時がここにあったことを、私たちは幸せに思うとともに、氏に心より感謝し、ご冥福をお祈り申し上げます。
プルチョウ先生、本当にありがとうございました。

                       知半庵 あわやのぶこ

注)プルチョウ氏のお写真は、ご家族の許可を得て掲載させていただきました。